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二本松市における字別建設

 すでに、自立型の地方都市として低負荷型建築・市街地形成システムを考え
る上で、二本松という都市が潜在的に温存する歴史的背景もったコミュニティ
ー「字」単位の行政区が重要な鍵を握っていることを指摘した(註1)。
 本稿では、二本松市において昭和39年度−平成3年度に確認申請がなされた
8,496件を対象として建築物の投入情況を確認し、その中にあって、特に、明
治22年の東北本線開通と直通道路開通の恩恵に浴した本町(1・2丁目)と、
それに隣接しながら裏通化した松岡における建築物の投入情況とを比較すると
同時に、旧二本松七町内をも比較の対象とした(註2)。因みに、対象期間の
本町の建築物投入量 545件、松岡 310件、旧町内 3,496件。
 また、本稿では、二本松市において木造建築物でも特に住宅建築の占める割
合の高さから、社会的資産としての木造建築の特徴についても言及した。

【昭和39年度から51年度における二本松市全域の建築物投入量】
 二本松市全域の建築物投入量の年度別推移をみると、昭和39年度から51年度
に掛けて可なり大きな伸びとなっているが、昭和51年度をピークに幾分下降気
味の気配を見せる。ところが、周辺部の建築物投入量をみると、昭和53年度以
降殆ど落込みをみせていない。その分旧町内の建築物投入量が下降しているこ
とになる。

二本松市全域の建築物投入量年度別推移

松岡町・本町の建築物投入量年度別推移

 また、木造専用住宅の投入量をみると、市域全体の建築物投入量の推移と同
一の変化をみせている。このことは、二本松市域全体の建設動向が木造専用住
宅の投入量に大きく左右されていることを示している。

松岡町・本町の木造建築物投入量年度別推移

用途別の木造建築物投入量年度別推移

 世帯数をみるなら、昭和30年の6,151世帯、昭和40年の6,850世帯から平成2
年の9,327世帯まではほぼ直線的に増加しているが、一方、人口のほうは昭和
30年34,987人、昭和40年の33,939人から平成2年の34,927人まで殆ど変化し
ていない。
 この二本松市の世帯数および総人口の推移と建築物投入量の推移を比較して
みると、旧町内における建築物投入量の落込みは、世帯主の高齢化傾向とと反
比例し、周辺部における築物投入量の維持は若い世帯の移動に負うところが多
いものと推測される。

【松岡・本町両地区の建設動向】
 二本松市の商業の中心である本町地区の建築物投入量に関しては、昭和42年
度から昭和52年度にかけて一つの緩やかなピークを迎えるが、殆ど当時の「い
ざなぎ景気」とか「ドルショック」といった一般的な景気変動の影響を受けて
いない。また、松岡地区においては、昭和45年度あたりから昭和50年度あたり
にかけて一度落込みをみせ、昭和60年度あたりから更に二度目の落込みをみせ
ている。

 松岡・本町両地区ともに平成4年度以降建築物投入量は最低の段階に到達し
ており、建築物年齢の高い松岡地区と比較的建築物年齢の低い本町地区にあっ
ては、建築物個別の物理的耐用年限・機能的耐用年限といった枠を越えた部分
で、今後、一気に建替えが進行する危険性が高いことが指摘され、前回の滅失
建築物年齢を基にした更新の情況に関する報告を更に確かめる結果となってい
る(註3)。

【二本松市の木造住宅における特徴】
 社会的資産としてみたとき、二本松市の木造建築の特徴的な[延床面積と居
室面積の関係]および[延床面積とパブリックな面積の関係]について概観す
ると、居室面積・パブリックな面積の孰れの場合も延床面積の増加に従って増
加する傾向にあるが、その傾向は居室面積の増加の方がかなり顕著に現れてい
る。この居室面積の増加は一室当りの面積に余裕をもたせることより、部屋数
の増加にウエイトが置かれた結果によるものであると同時に、廊下を経由しな
い部屋の接続形式が多いことを予測させる。平面形式を検討した結果は、続間
が多いことが確認されているが、注目すべきことである。因みに、居室一室当
りの面積は僅かな増加傾向はみせるものの、3.75坪周辺に集中分布していると
考えた方がよかろう。

延べ床面積と居室面積の関係

延べ床面積とパブリック面積の関係

 また、[延床面積と単位柱本数(本数/坪)の関係]をみると、延床面積の
増加にともなって単位柱本数が減少する傾向にあることが確認されるが、相関
係数は−0.500835となって、必ずしも図に示された回帰直線と相関性ありとは
言えない。しかし、江戸・明治期の住宅を同一図上にプロット(○付数字で示
す)すると、現代の住宅に較べて総じて低い値を示すものの、同様の傾向を示
している。

単位柱面積と述べ床面積との関係

 そこで、[延床面積と使用柱本数の関係]を確認すると、延床面積が35坪を
越える辺りから上昇カーブの度合いが僅かながら下降しているのを確認するこ
とができる。この傾向は[居室面積の関係]にもみられる傾向で、35坪前後を
境として繋ぎ空間の占る割合が増していることを意味するものであろう。

述べ床面積と使用柱本数との関係

 (註1)広域の括りは、消防組織・塵処理班にみる限り、旧二本松藩の領域
    に近づいている。
     平成4年度日本建築学会大会学術講演梗概集 『「依怙都市・二本
    松」調査報告(2)─字限図を中心としたケーススタディー』
 (註2)本町(1・2丁目)は、『「依怙都市・二本松」調査報告(2)』
    にあって対象とした地区である。また、次年度の1993年度日本建築学
    フロー・ストック』において二本松市にあっては社会的資産としての
    木造建築の位置付けが高位にあることを指摘している。
 (註3)1993年度日本建築学会大会『「依怙都市・二本松」調査報告(3)
    ──字別にみた建築物フロー・ストック』
 (註4)1993年度日本建築学会大会『「依怙都市・二本松」調査報告(3)
    ──字別にみた建築物フロー・ストック』
 (註5)平成2年度重点先導研究報告書 『低負荷型建築・市街地形成シス
    テムの開発構想(エコ・シティー構想)の策定〈基礎的研究〉』建設
    省建築研究所・(社)建築研究振興協会 平成3年3月