以上のことを踏まえた上で、今回報告するのは(T)の「近世都市基盤成立
の同時代的考察」の範疇であり、二本松城下だけでなく、棚倉・白河の両城下
を併せて考察することによって、近世初期の都市造りにおける丹羽氏の空間構
成手法と空間維持管理の基本的システムを検証することになる。すなわち、二
本松城の中世的性格から近世的性格への変身過程を明確にすることは、二者の
間の空間特性の違いを明確にすることになり、それによって産出された維持管
理システムは、近世二本松城下の空間構成を維持していく上での根本的条件と
なる。こうした事柄の検証は、延いては、現在の二本松市街の「空間構成原理
の骨格」を明かにすることにもなろう。
このような考え方の基に定量化可能な範囲を明確にすることも必要で、は図
ー2のようなフローにおける「空間構成と敷地利用形態」と「資源のStock &
Flow」および「建替えサイクル」の部分を構成する。
「空間構成と敷地利用形態」に関しては、明治15・22年の『字限図』と昭和
33年の『地籍集成図』から敷地形状の変化を洗い出し、敷地の利用形態を抽出
する。
また、「資源のStock & Flow」に関しては、固定資産税台帳から対象とする
地区における建築物の建設年代別残存数を抽出し、既存の建替えサイクルを検
討すると同時に残存建物総数からストック資材とリサイクル可能な資材量を算
出する。一方で、ランドサットの画像解析などから地場資源の量を推定しなが
ら、今後の基本的な建替えサイクルを推定する。
なお、ランドサットのTMデータはリモート・センシング技術センターから
購入した二本松周辺における1992,5,21のピクセル3050、ライン2650切り出し
データをMS-DOS対応に加工して使用した。教師データとしては郡山市周辺の
TMデータを地上観測データと比較して用いているが、たとえば、森林の割り
出しには現地観測で5月時点の天空率0の杉林に該当するデータを用いている
が、その中には天空率0の松林等が含まれる可能性もあり、全てがそのまま建
築用材とする訳にはいかない。しかし、杉・松いずれも建築用材として使用可
能な材料であり、概略を把握するという範囲では充分活用可能な数値である。