実験目的
建築物が地震力などの水平力に対する水平抵抗要素として,ブレースや耐震壁が使用される。これらの要素の配置の良否により,建物にねじれが生じ,大きな被害を受けていること,および床が水平力を伝達する上で重要な役割を担っていることが良く知られている。 そこで本実験では,水平抵抗要素の配置や床の有無を再現する一層ラーメン模型の加力実験を行い,変形性状を比較,検討する。
実験方法
図3.1に骨組の概要図として展開図を示す。床面(GHI)は1辺内法を150mm,壁面(ABCDEF)を幅150mm,高さ200mmとした1×3スパンラーメンとする。実験材用として柱に厚さ1mm,幅5mm,梁に□3mm×3mmを使用し,ともにヒノキ材を用いた。
はじめに筋交い,パネルを何も入れない状態で重心位置を作用線上が通るようにばねばかりで水平方向に引っ張る。その後に図1の展開図ABCDEFに壁パネル,圧縮筋交い,引っ張り筋交い,GHIに床パネルを規定の位置に配置し同様に実験を行う。また,パネルには厚さ3mmのスチレンボードを用いた。
実験結果
表3.1,表3.2に実験結果を表す。表1には床パネルがない場合,表2には床パネルがある場合を示し,床面GHの剛心位置での平均移動距離を示した。
表1で壁面ABCDEFに何も入れない場合,48.03mm変位したのに対し,表2で同じ条件の場合は,40.92mmで変位が減少した。これは床パネルが梁の変形を拘束することにより,梁の剛性が増加したためと考えられる。
配置の不釣り合い(上なし,下全部など)にした場合,釣り合いよく配置した場合に比べて,Y方向の変形が大きくなる。また,床パネルがない場合,変形が一方のフレームに集中するが,床パネルを入れることにより変形が分散される。写真に実験風景を示す。
今回の実験結果より壁パネルを釣り合いよく配置することによって,偏心が少なくてすむ。また筋交い,パネルを多くするとより偏心が少なくてすむ。このことから水平抵抗要素として,実際の建物がブレースや耐震壁を規定の釣り合いの場所に配置して,大きな被害を避けている事が分かる。
考察